全員が同じ本を選んで,読み,感想を交流するというものです。
土井 隆義(著)「友だち地獄」 (ちくま新書)をうちのクラスでは選びました。
私自身,過去に読んでいて,印象深い本だったので,学生たちがどのように受け取り,解釈するのか楽しみでした。
わたしの個人的興味は,年齢差30歳以上ある学生たちが,この本を読んでどのような異なる感想を持つか,似た感想を持つか,ということでした。
5人が5人,「本」を通して,「自分の生活を振り返って」「人との付き合い方」「集団での過ごし方」を話してくれましたが,わたしの感覚とそんなに大きな違いを感じませんでした。
この本は,2008年出版の本です。
この出版時期と学生の感覚とのズレがあるのではないかと思いましたが,学生たちは2008年というとちょうど小学校低学年の時期にあたるようで,この本で展開されているような内容は心当たりがあるということで世界観に関してはすんなりと受け入れることができたようです。
「友だち地獄」を読んだ当時の自分の心の流れ
以下,これは学生との学びというよりもわたし個人の学び,興味を記しておきます。
わたしは,この本は出版されてすぐではなく,2018年に読んでいる記録を書いています。
この頃は,単なる経験則ではなく,書籍や論文から,学級内の人間関係を見つめたい,特に理論というよりも,学級で起きているリアルを見つめてみたいと思っていました。
ここで連ねて読んだ本は下のような感じです。
山本七平(著)「空気」の研究
鴻上尚史(著)「空気」と「世間」 (講談社現代新書)
「学級」という「空間」もしくは,学校空間,職員集団の空間などを自分の中で自分が納得する形で理解してみたいという心の現れだったように思いますね。
私の中では,鴻上尚史さんの主張がとてもわかりやすく腑に落ちています。
「優しい関係」
(ということで,本日の授業に再度,戻ってきました。あっちこっちですみません。ブログは散文ですから……笑)
さて,「友だち地獄」にもどると,ここでは「空気」のことも(サブタイトル通り)書いていますが「優しい関係」というのが本書の中のキーワードになっています。
自分だけが読み書きするSrapboxにメモとして書いているのですよね。下に転記します。
土井隆義著「友だち地獄ー空気を読む世代のサバイバル」(2008年3月) 誰からも傷つけられたくないし、傷つきたくもない。そういう繊細な「優しさ」が、いまの若い世代の生きづらさを生んでいる。 対立の回避を最優先にする若者たちの人間関係を、本書では「優しい関係」と呼んでおきたい。 他人と積極的に関わることで相手を傷つけてしまうかもしれないことを危惧する今風の「優しさ」の表れだからである。 他人と積極的に関わることで自分が傷つけられてしまうことを危惧する「優しさ」の表れだからでもある。 かつての若者たちにとっては、他人と積極的に関わることこそが「優しさ」の表現だったとすれば、今日の「優しさ」の意味は、その向きが反転している。
(勝手に自分に引き寄せていますが)わたし,この表現,とてもわかるのです。
なぜなら,わたしが「優しい関係」で生きようとしているから。「若い」なんて言葉,わたしからは全く出てくるはずもないのに,若者と同じ感覚で日々生活しているのかぁ……と読みながら衝撃を受けた記憶があります。
で,うーん,今でも少なからずこの感覚があるんですよねえ。
一読するとわかりますが,本書の中で「優しい」というのは,一般に使う「優しい」と少し異なる意味で使っているので,しっかり読まねばどういうことを言っているのかわかりません。上の引用で少しはわかってもらえるかもしれませんが。
学生たちに,この「優しい関係」については納得できますかと尋ねてみたところ,みなさん(他のいじめの表現等々,賛成できない,同意できない部分はいくつかあるが)「優しい関係」ということに関してはわかると話していました。
今も,そういう関係での人間関係はあるというかあるのでしょうね。
本を介してのやりとりはおもしろい
(で,また別な話題へ飛ぶのよ)
今回,1時間だけでしたが,あらためて本をもとにしたやりとりは面白いなぁと思いました。
基本,理屈や理論,講義を聞く授業だったら,こうして本を読んできて自分の経験や考えと重ね合わせて話し合うことのほうが数倍,実りがあるし,能動的だと思います。
協同学習の世界には「LTD話し合い学習法」というのだってあるしね。
問題は,本を揃えてみんなで読み進めることに学生が同意してくれるかどうかということかなと思います。
2019年度のある授業では,1冊の本をみんなで選んで読み進めるということをしました。
この時,学生が選んだのは左の本。
鈴木有紀(著):教えない授業――美術館発、「正解のない問い」に挑む力の育て方(英治出版)2019年
各ページ,指定して,次の授業時間まで読んでくることを課題としました。
授業では,各自,良くも悪くも自分の中で引っかかったところを話題にして話をどんどん展開していくというようにしていきました。
上から下から,斜めから〜といろんな方面から話題が降ってきて,とてもおもしろかったですね。
学生も(リップサービスたっぷりだったと思いますが),この時期の授業で一番楽しみにしていたと話してくれていたことを記憶しています。
知識を吸収しつつ,能動的に学べる学びをこれからも考えていきたいですね。
本を読み合う……。
とっても能動的な学びですよねぇ〜。
(あとは,どのように読んできた本を交流し合うかということで,いろいろな方法があるのかな。ここはここでまた難しいところかもしれませんなぁ。)
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