佐々木潤さんのご著書。かつて,共に東北地域の教育をよりよいものにしたいという思いから活動を続けた「東北青年塾」を共に立ち上げた盟友である。
こうして読み応えのある単著を次々に刊行していること,純粋にすごいと思う。
わたしは,過去に1冊だけ単著を書かせてもらったことがあるが,それも基本,ワークシートを一方に載せてもう一方にそのワークシートをどのように使うか説明をしただけのものであった。この過程で,自分にはいかに力がないかを思い知らされた。
単著を複数冊刊行するということは,相当の力がないとできないことである。
佐々木さんは言う。
この本は,先進校でもない私学でもない,地方の一公立小学校での取り組みをまとめたものです。裏を返せば,どこの学校でも実現可能なことを載せたものです。私は,教育学者でもないし,大学の研究者でもなく,指導主事でもない,ただの現実の一教師です。しかし,これまでの積み重ねてきた実践には説得力があると思っています。
ここに佐々木さんの矜持がある。
佐々木さんが書かれる本の特徴は,現場実践者だからこその事実に基づいて書かれているということである。もう少し細かく言うと,ご自分の実践を説明や主張をする時,写真や子どもたちの実物のノートを数多く利用している。
かっこつけでも,言いっぱなしでもなく,現場実践者だからこその事実に基づいている。
これをもう少し,深堀りするならば,佐々木さんが書かれたこと,示されたことは一朝一夕のものではないということである。つまり,タイトルにある「個別最適な学び」「協働的な学び」「ICTを用いた学び」を随分前から日常活用し,それを積み重ね,記録し,自分の中で分析してきたという証左でもある。
これがどんなにすごいことか,少し想像しただけでもわかるだろう。
そんな本である。
そこかしこにたくさんの学びがある。
本の構成として,中心に「個別最適な学び✕協働的な学び✕ICT実践」があるが,それを挟むように,前には「個別最適な学び✕協働的な学び✕ICT実践」の理論的背景,後には「個別最適な学び✕協働的な学び✕ICT実践」を行っての効果と課題を掲載し,独りよがりの内容ではないことを示すと同時に,佐々木実践を通して今後誰かが発展させていけるような仕組みになっている。
「東北青年塾」で共に活動している際,常々,感じていたことだが自分のこと以上に周りへ気を配るところも含め,さすがと思う。
光栄なことに,この本のp60でわたしも登場させてもらっている。
どんな登場をして,わたしと佐々木さんがどんなやりとりをしているかは,ぜひ本書を手にとって読んでほしい。
このエピソードを取り上げてもらえるのは,うれしい……というか,なつかしい……というか,そうなんだ……佐々木さんも頭の中にこのやりとりが残っていたんだ……という感想というか,思いである。
(たぶん)「東北青年塾」の講座を終えて,仙台の居酒屋でアルコールを口にしながら話した内容だったように思う。
当時,子どもと共に授業をつくる,子どもに授業を任せる『学び合い』に舵を思い切りきったわたしは,東北地域の中でもとんがった授業づくり,学級づくりをしているメンバーの中でも,めちゃくちゃ異質な存在になっていた。
隣に座った佐々木さんは,いつもの人懐こい笑顔で,私に批判的な言葉を投げかけてきたのである(だから,その内容は本書のp60を読んでね)。これは,佐々木さんとわたしだからこその関係だからやりとりできたわけで,それだけ佐々木さんはわたしを信用,信頼してくれていたのだろうと思う(思いたい)。
結局,当時は,佐々木さんに納得してもらうような話をすることができなかったのだけど,当時,多くの『学び合い』や学習者に授業の主導権をわたすという授業観をいまいち納得できない代表としてダイレクトな話し相手になってもらった感じがしてうれしかった。同時に,とってもムキになって話した。記憶が勝手に捏造されているかもしれいが,居酒屋の中で,熱くなって声が大きくなり,周囲から,2人,何ムキになって話してんだと思われていたように思う。
今思えば,授業や授業観について,面と向かって真正面に熱く語ることができる相手がいたこと,それが佐々木さんであったこと,とても幸せなことだと思う。
これらも含め,一人の熱き実践者が自分の教育観をどのように育てていったかなども本書からわかるようになっている。
ぜひオススメしたい。
また佐々木さんと,そして,東北青年塾の面々と,温泉地に宿泊しながら話し合ってみたいな……。もう今年は無理だから,来年の今頃,そろそろ対面の忘年会やってもいい頃になっていそうなので(期待を込めて)実現できたらなと思う。
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