2023年1月28日(土)は,「第23回学級経営実践セミナー(山梨)」でした。
指定討論者としてわたしを招いてくださいました。
早く,この様子の記録を書いておきたかったのですが,自分自身の立ち居振る舞いを振り返るエネルギーを捻出するのに時間がかかって数日経ってしまいました。
若手2人の発表の後,その発表者2人と佐橋慶彦先生とわたしを合わせた4人(進行に渡邊克吉先生もお入りになりました)と共に30分のお話をするということでした。
いろいろとねー。
難しいですよねー。
2人の発表をもとにしなくちゃならないし,
その発表は別の内容だし,
佐橋先生とわたしが加わるわけだから,2人の話に佐橋先生の話とわたしの話が重なることが理想だけど,ともすれば,佐橋先生とわたしとで別々な話を展開してしまって空中戦になり,話が拡散してしまう可能性があるし。
そこを丁寧に拾おうとしたけど……,たぶん,わたしと佐橋先生のお話はうまく重ならない感じで進んでいった気がしましたね……。佐橋先生に申し訳なかったです。
とにかく発表者のお二人は,内容にも発表にも勢いがあって,自分の目の前の学級の子供達を十二分に惹きつけた実践を行っていることがよくわかりました。考えてみれば,大学の教員として教員になる前の若者(学生)の授業等にはつきあってはいるものの,若手教員の授業実践発表を聞くのはわたしとしては,久しぶりでした。何の根拠もない予想として,今の若手教員は,なかなか自分のやりたいことを存分にやれない環境にあり,それを外にも向けて発表しにくいのではないかと思っていましたが(何の根拠もありません),今回のお二人は,自分でやられてきたことをしっかり振り返り,自分の中で意味づけながら発表していて,うれしくなりました。やりっぱなしではなく,自分のやっていること,やってきたことに意味づけができることは相当ちからがあるという証拠です。
大きなテーマとして,「安心・安全な居場所」や「心理的安全性」のようなキーワードがありましたが,発表者2人はあえてそこをいちいち強調することなく(たぶん,そこを意識するのは当たり前ということかな),1年間,ご自分がやられてきた学級経営実践をお話してくださったようでした。それぞれにご自身の考えのもと,工夫した実践を具体的に話されました。経験年数に比べて圧倒的な質の高い実践を発表されており,すばらしいものでした。
さて,4人のお話の段階。
佐橋先生は,「ゆるやかな紐帯」という言葉を用いて,2人の発表者の発表をつなぎ,そして,深く探っていこうとする試みをしているようでした。その発言を引き継ぎ,または,キャッチボールし,やりとりすることで深く深く探っていくことができたかもしれません。
しかし,わたしは,佐橋先生のボールをキャッチせず,各発表者の実践そのものにくいつき,個々に具体的に質問し,感想を述べていくという進め方をしてしまいました。
反省。
ふと,今読んでいる甲野善紀・方条遼雨(著)「上達論」(PHP)という本と想起します。
「まず基本を身につけよう」
この言葉に呪縛されてどれだけ多くの才能が芽を吹かずに枯れていったか
と帯に書いており,
基本を基本から検討する
というのがキャッチフレーズの本です。
おもしろいですよ。おすすめです。
その中の一節に,「稽古を読みとく」という節があります。このまま抜書きしたのではわかりにくいでしょうから,わたしなりに改変してお伝えすると,
例えば,組稽古である技の練習をしていたとして,同じ技を掛け合うだけでも,頭の中で大きく3つに別れて稽古をしているといいます。
1つは,この技をかけられる状況を想定し,脱出または反撃のことを考えるという練習。これは,実践的な稽古だといいます。
2つは,この技をかける手首の使い方や肘の角度といった,テクニックを研究する。これは,技の稽古だといいます。
3つは,この技の形を借りて,根本原理を組み替えようとする。これは,原理の稽古だといいます。
練習する人は自身が,どの練習を行おうとしているか意識し,かつ,組み手同士そのことを知っているかどうか……ということ。
わたしは,しっかりその場の話したいこと,話すべき内容を展開していたのだろうかどうだろうか……,心配になります。
(ちょっと心配なのは,上の本ですけど,概要を大きく切り取りすぎているので,ちょっと本の意図とは異なる切り取り方をしている感じがします。ここからさまざまに話が展開していくので,「基礎基本」とか「上達」とかに興味ある人,単純なドリル練習って意味あるのか?って思う人など,おもしろいと思います)
この4人での時間は,2人の発表に関しての協働的なリフレクションでもあったわけです。
そういう意味では,「シングルループの振り返り」と「ダブルループの振り返り」も意識して臨もうとは思っていました。
「シングルループの振り返り」とは,いわゆる実践そのものの振り返り。「やってみてどうだったのか」「この実践で何を学んだか」「実践して気づいたことは何か」みたいなね。実践の内容そのものにフォーカスした振り返りです。こちらは実践の枠内を見る振り返りともいえましょうか。
「ダブルループの振り返り」とは,実践の枠組みや前提を問う振り返りです。「この実践にはどんな意味があったのか」「もしかして,他のよりよい進め方があったのではないか」とか実践の意味を問う振り返りです。こちらは実践の枠外から実践を見ている感じになりますでしょうか。
これらを意識して,かつ,4人の調和,空気,を乱さないように,そして,佐橋さんの質問紙たい内容にしっかり寄り添うようにしたい……と思って臨んだわけでしたが……。
うまくいかないものです。
まだまだ,修行は続く。だから,おもしろい。
山梨の若手二人には,どんどん,自分のやりたいことをどんどん展開していくことを期待しますし,応援もしたいと思います。
いろいろと刺激的な発表,ありがとうございました。
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